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あ)ナイロビの蜂 & 明日の記憶 [映画(あ]

2本の邦洋『夫婦もの』を一気観た。

朱色会も映画のレビュー・コメントにも慣れが見えるので
ややマンネリを感じている読者もいるに違いない。

いつもだったら、見た順番にコメントして採点して終わりなのであるが
それではつまらない。せっかく一緒にみたのであるから。

そこで、今回は、どのブロガやプロ映画評論家も
成し遂げられない2つの映画の同時レビューを敢行する。

そんなわけで、読者も、2つの映画を観たものに限る。

えっ、前説はいいからとっとと始めろ?
…そうですか。でははじめます。

ーーーーーーーーー「 」---------

夫婦の姿を、事件や出来事を題材として浮きぼらせている点で、
2つの映画は共通している。

テーマは、女とはなにか?
もう少しいうと「妻」とは何かということになる。

テーマは一緒ながら2人の女(妻)の描き方は、
欧米のらしさと日本らしさが良く出ていた。

結論からいうと
ナイロビの蜂『The Constant Gardener』(以下【ナ】)は、夫を守る女
明日の記憶(以下【記】)は、夫を支える女
ということになる。

また、話のネタとしてでてくる題材は、まったくことなる。
かたや、大企業と政府がからんだ国際的な陰謀
かたや、夫の若年性アルツハイマー病となる。

病気は神が我々にあたえた運命であり、
巨大な陰謀も個人として対決するにはあまりにも大きいものである
ため、両者の立ち向かうテーマに実は「勝利」はない。

ヒロイン役の枝実子(樋口可南子)とテッサ(レイチェル・ワイズ)
政府と大製薬会社の陰謀をあばくキャリヤウーマンジャーナリスト


長年連れ添った夫がアルツハイマー病に冒された、その妻。

「つれあい」は【記】の方は日本男児われらが謙さん。
(もう健さんは朱色会は卒業した)
広告代理店部長で、いままで仲間や取引先に恵まれ、順調に仕事をしてきた
仕事一筋50おとこ。(ニポンサラリーマンの代表だね)

また、【ナ】の方は、エリート下級外交官(←っていういいかたは失礼かな)
まぁ、外交官家族にありがちな、
おぼっちゃまおじさま役のレイフ・ファインズ(ジャスティン役)

妻の死を追求するなかにも、何か醒めているその難しい演技は
役の捉え方に対する苦悩がみてとれる。
また、なんとか夫婦の時間を差し込んでいるのではあるが
事件経過を反芻すると夫婦時間が短いなかでの出来事なのだろう。
…でもまぁ夫としての共通項として、映画冒頭の出方は、
「【女房第一】でないキャラ」であることは同じだ。

『災難が起こった伴侶』に対する行動にも違いが見える。

ナゾ(死んだ妻が追いかけていた真実)を追う男。

夫婦の絆(死にゆく夫の人格や自分との思い出)を繋ぎとめようとする女。

夫婦の問題について、避けて通れないのが
夫婦をやっているひとならば一度は関係するであろう
「第3者」のからみ
が、さらに夫婦役への表現のリアリティを上げている

「…え。ワタクシは、一生ひと竿(穴)ですよ。」
…そうですか。………そうですよね。

夫婦と【仕事】の関係は今世紀も重要な課題だ。
今回の2本についていうと

【仕事】にひっかけられていたのは
まず、謙さん、そしてレイチェル そして可南子さん。

謙さんは仕事にひっかけられていたことに心底気づくのではあるが
レイチェルはどぅだったんだろう。
真実の追究>夫 であったというか、もしかしたら
夫for真実の追究 …であったような描き方だった。

そのため、本編のなかで【To protect you】という
ジャスティンに贈られたセリフについても
「うーんそうかな」と思ってしまった朱色会でした。

ま、どちらもストーリーとしては実は希望がかなり少ないものだ
【ナ】については、最初っから妻が死んでしまうところから始まるので、
謎解きに終始してしまう。

かたや【記】のほうも、【救いが少ない病気】を背負った夫が相手である。
余談ではあるが朱色会も不治の病を患ってしまったときは
同じ行動をとった。だから、謙さんの振る舞いについてはよく分かる。

…にしても謙さんすげぇ貫禄と迫力だ。
ハリウッド帰りはちがうねぇ。
まるで【焼き栗が弾けるがごとく】の感情表現は、観客をあっと
いわせるのに十分だ、またそれが、いつもの【静】の演技を際立たせており、
意図的なものだろうとねらいなしだろうと素晴らしい演技だった。ぶらぼー。

告知後の非常階段のシーン。忘れられない。
「わたしがいます。」

なんとか樋口さんだけ謙さんの迫力に追従していたが
他の役者さんはわるいが圧倒的な演技力に吹き飛んでしまっていたね。
余談だが、今回はエグゼクティブプロデューサも兼任しており、
一俳優というより一表現者としての映画への参加である。

印象にのこるシーンは、可南子さんの頭から血がたらりと落ちるシーン

観客夫婦の中には、ココロが疼いてしまう方もいることだろう
妻に手を上げてしまったものにとってはね。
また、未婚の男の『予防薬』になってほしい名シーンだ。

このシーンの直前の加奈子さんの絶叫は、
【映画を観にきた女性(妻)たちがココロから誰かに叫びたい内容を代弁する声】
なのではないか?そんなことを考えた。どうかな?

謙さんが職場をさるとき、若い者があつまった。
こういう人ほど、職場に残るべき人だ。
(朱色会の周りには、残念ながら謙さんはいない。)

最初っから妻の死からはじまる洋画と

不治の病ながらその最期を描くまでいかない邦画と

生(死)に対する描き方も邦と洋で異なる。
映画のクライマックスもどちらも「静か」だが異なる。
最期の描き方もね。

…【ナ】のオワリかたについてはどぅなんだろね。これから
辛口ブロガの講釈の巡回にあたるんだけど、
妻を守れなかった自責の念ならばちがう結末で表現すべきだ。

宣伝のうたい文句『一生に何度出会えるかわからない映画の奇跡』
…というほどの結末ではないぞ。

そういう意味では ジャスティンより枝実子さんのほうが

強いわけだろ。もはや自分を認識しなくなった夫のあとを
付いていくなんて、なんて女性なのであろうか!!
この強さ、ちょっとまねできない。結婚すればかわるのだろうか?

…あと、気になったいつものいちゃもんつけ。

病院は、屋上の鍵はフリーではない。(本編でもあった不測の事態防止)
告知を受けた謙さんは、屋上に立つことは不可能。

ロケハン不足なのか予算関係なのか
冒頭差し込まれるCGは、ゼンブいらない。取った方が点数があがる。
日本の自然をそのまま表現してほしかった。
どんなにリアルに表現しても、現実の自然には勝てない。
この映画のテーマを考えると、入れるべきことではなかった。
タイトル名については、邦画のほうは内容との齟齬がおおきいかな。

女性記者テッサがいかにしてこのようななりふりかまわない
ジャーナリズムに駆り立てこととなったのかその説明が足りないため
単に周りを省みない猪突猛進なジャーナリストと写ってしまうのが
残念だ。話そのものは話をむずかしくしたほうがウケがよさそうとばかり、
観客の映画リテラシーを喚起するほどの複雑さで、
推理小説なみの複雑さであった。
2時間程度では、これほど複雑にくまなくてもいいのだよ。
くまなくてもいいのだよ(2回目)

みっちぃ がんばってたな。

大滝サン。あなたはほんとぅにすごい役者だ。
唯一、本映画で謙さんを霞ませたアクターだね。

「酒と、くいもんと、女がいればそれでいい。」⇒そのとおり!!!

…さて採点であるが

ナイロビの蜂:67点
明日の記憶:71点

どっちかだけしか見ないというならば明日の記憶のほうがいい。
できるならば夫婦でお越しいただき、鑑賞の後次のような
会話をかわしてください。

「…どうだ、ちょっとメシでもくっていくか?」

「?いやねぇ急にキモチワルィ。どぅしたんですか(笑」

「焦)いや…とくに意味はないけど、まだ明るいじゃないか?」

「…そうね。……いきましょう。おとうさん。」

…まっこと、男に『女』がいてよかった。

そして、次の諺に筆を加えるべきだろう。
「女は弱し、されど母は強し。」
      ↓
「女」も「母」もそして「妻」もゼンブ強し。

わははは。

最期に、明日の記憶を一緒に観た観客の印象について
軽く入る笑いについて、素直に観客と一緒に笑うことができた。

シリアスな映画であっても、エンタに変わりはないのである

観客も、ご年配のご夫婦が多く、いいとっつあんが鼻をならしている
のを周りで聞いて素直に「いいな」と思った。
意外なことに、妻たちは冷静に楽しんでいるようだったね。
『こんなこと当然よ』ってことですか?
男と女の違いを再認識して、映画館を後にしました。

最近はイイ映画に出遭う。
来週はおそらくダビンチ。おあとがよろしいようで…。


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睦月

こんばんわ!TB&コメントありがとうございました!
朱色会さんは夫婦ものを2作はしごしたのね。とってもよいチョイスだわ♪
一応、『明日の記憶』も鑑賞する予定です。だから、記事はところどころしか読んでないよ。
来週はダ・ヴィンチ・・・。これ、原作がものすごく面白かったから、
実写でどこまでやってくれるか・・・大いに期待しております!
by 睦月 (2006-05-17 02:27) 

朱色会

ソぅかしら♪ってオリはおとこだぁ~
…睦月さんの、『明日の記憶』の鑑賞記たのしみどすえ!
ナイロビの蜂の、じとっとした感動ではなく、邦画らしいほろりとした感動がある。コメント毎度どうも。
by 朱色会 (2006-05-17 19:40) 

こっちゃん

こんちわ~(^o^)/こっちゃんです。

なるほど~ですね~
こんな観方も映画のうちですか。
こっちゃんは「明日の記憶」しか観てないので、
「ナイロビ~」のことは何とも言えないのですが、
確かにこうやって観ると意外に「共通点」が見つかるものなのかもしれませんね。
また逆に、似てると思ったものが全然別物に思えてきたり。

とにかく「明日の記憶」に関してはとても良かったですよ。色んな意味で。
怖くもあり、暖かくもありといったところでしょうか?(^o^;
by こっちゃん (2006-05-18 13:54) 

朱色会

こっちゃん。いつもどうもです。

いぃなぁヤクルト400…いいなァ~(ヤクルトやりながら生謙さんももちろん。)
リアルなこととしてはほんとぅに若年アルツや認識症増えています。母の知り合いも認識障害を発症し、ヤスいことはいえないですが防御できない病については国で厚いバックアップしてほしいなと思うこのごろです。
by 朱色会 (2006-05-19 20:34) 

冨田弘嗣

 コメント、ありがとうございます。感謝です。
とても面白い評論ですね。「ナイロビの蜂」と「明日の記憶」のコラボレート。このホームページは、評論というより「本」ですね。それも上質の映画本。ときどき、読ませてもらっていますが、やはりこういう文章を読むと、私の愚文が際立ちます。どこからこんな文章が生まれてくるのか「凄い」です。これからも読ませて下さい。本当にありがとうございます。
 私が唯一、お金を払っている気がしないもの。それは映画や美術館などのチケットなんです。自分が観たいだけで、観たかったらいくらかのお金を支払わなければならない。料金が高いのか安いのかがわかりません。3000円でも1000円でも、言われたとおりのお金を財布から出し、チケットと引き換えるだけ・・・そんな感覚です。ですから、お金で評価をする評論は好きになれない。私には良いのか悪いのか、判断に困る採点法です。そんなこんなで「映画をお金で評論するのが嫌い」と書いてしまいました。
 これからも宜しくお願い致します。 冨田弘嗣
by 冨田弘嗣 (2006-05-21 16:07) 

朱色会

冨田弘嗣さん。コメントありがとうございました。
喜んでいただき、何よりです。このブログは映画専門となっておりますが、拙は他にもいろいろ書いてネットに上梓しておりますのでブログサーチなどで「朱色会」と検索してよろしければご覧ください。余りあるお褒めの言葉重ねてお礼申し上げます。映画は前の世紀は確かに「芸術」または「文化」でした。いまは残念ながら「産業化」そして「経済」に組み込まれている感が強いです。その一端は、映画を初めとした美術や文学を受ける我々の責任もあるのかなと。よいものをよいと思うココロの研鑽とそれを選んでいく「選者の苦しみ」を担っていけるのかどうか。その可否に芸術が成長を続けるのか、それとも荒廃していくのかが掛かっていると強く思います。
by 朱色会 (2006-05-21 16:56) 

いも

こんばんは!なかなかコメント残せなくてスミマセン。
2本同時レビュー、おもしろい発想だなと思いつつ拝見させていただきました。
そして人それぞれ色んな視点から見ていておもしろいなと思いました。

私は「ナイロビの蜂」からはあまり夫婦の絆が伝わってこず、また「明日の記憶」は、「もし自分が家族だったら、こんなに(病気と)向き合う自信が無い」と思ったので、両方とも「夫婦もの」という感覚がほとんど消えてしまってたんですね。
朱色会さんのレビューを見て「そうだ、2本とも夫婦ものだったんだ」と改めて思い返した次第なんです。

「ナイロビ」の終わり方は・・・もしこれが実話だとしたら、(打ちのめされて)ああいう終わり方をする人もいるかも知れないなと思うのですが、「映画」(娯楽もの)として観たときには、個人的には好きになれない終わり方でした。
世の中イヤな事件も多いし、「映画にはせめて少しは希望や笑いのあるものを望みたい」という気持ちがあるからかも知れませんが。
by いも (2006-05-22 00:21) 

朱色会

いもさん。いつもコメントありがとうございます。

【映画】は人間を著すもの。そしてそれは何と問われたら、はっきりと「人間の素晴らしさをあらわすもの」といいたい。確かにこの世の現実に目を向けると不確実で曖昧であまり明るくない世の中を想定してしまうのですが、朱色会はまだ人間をあきらめてはいません。リアリティとエンタテイメントの元手はこの世にあり、映画はその化身にすぎないからです。まだ鼻声なので、鼻声で聞いたことにしてください。おやすみなさい。
by 朱色会 (2006-05-22 00:37) 

睦月

朱色会さん!こんばんわ。TB&コメントありがとうございました!

リアルに迫るこの物語・・・いろんな場面や人物の気持ちを自分に重ねて観てしまい、たくさん泣かされました。
謙さんの演技は彼自身の闘病生活の実体験が反映されていて、だからこそあんなに真に迫る素晴らしい演技が生まれたんだろうと思います。
もし自分だったら・・・そう考えずにはいられない映画でした。

さて・・・朱色会さんのダ・ヴィンチ・コード記事・・・。これから読みに参ります。
by 睦月 (2006-05-22 03:05) 

朱色会

睦月さん。コメントありがとうございます。

だいぶこの映画は睦月さんのココロを捉えたようですね。記憶は、人間にとって最大の財産であり、人間の人格を形成する礎ですから、命と同じくらいに大切なもの。それを生きながらに奪われる病なのです。そして、現実問題としてはこの稀有な病だけでなく、我々全員が歳をとると誰でもそれに似たような状態になるということです。そういういみで物語でありながらそうとうにリアリティのある映画となっていると思います。謙さんもそのようなことを表現したかったのではないでしょうか?最終的に幸せにある状態とはなにか?朱色会は映画館をでたときにそのことを考えましたよ。
by 朱色会 (2006-05-22 09:55) 

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